江戸川区水害ハザードマップ改定説明会から学ぶ
- anzenmanshonproject
- 2025年8月22日
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更新日:2025年9月1日

江戸川区水害ハザードマップが改定され、説明会が開催されました。区の約7割がゼロメートル地帯であるため、「大規模水害の時はここにいてはダメです」という明確なメッセージと共に、大規模水害時とそうでない時の2種類の避難行動が示されました。マンション管理組合や防災会の皆様は、このハザードマップを深く理解し、住民へ適切な避難行動を周知徹底する重要な役割を担うことを想定して、説明会の重要ポイントをまとめました。
江戸川区水害ハザードマップ改定の背景と目的
近年、地球温暖化の影響により、台風の大型化や集中豪雨などによる水害が全国各地で発生しており、江戸川区でも、平成27年9月の関東・東北豪雨や令和元年10月の東日本台風(台風19号)のような記録的な大雨で避難勧告が出される事例がありました。
江戸川区は、その面積の約7割が海面下、いわゆるゼロメートル地帯に位置しています。そのため、一度浸水すると、ポンプなどによる人為的な排水を行わない限り、2週間程度水が引かない状況が想定されます。このような地理的特性から、これまでのハザードマップでは「ここにいてはダメです」という強い表現で、住民に避難を呼びかけてきました。

今回のハザードマップ改定では、この表現が、東京大学の片田孝特任教授(江戸川区防災アドバイザー)の助言を受け、「大規模水害の時はここにいてはダメです」と明確化されました。この改定の最大の目的は、大規模水害が予想される時と、局地的な大雨などによる大規模水害に至らない水害が予想される時の両方の避難の仕方を、区民に明確に示すことです。
また、東京都が令和6年12月に改定した高潮浸水想定区域図や、中川・綾瀬川圏域洪水浸水想定区域図に基づき、浸水の深さや継続時間などの地図情報も更新されています。区は、自身の命、そしてご家族や大切な人の命を守るために、このハザードマップを最大限に活用するよう呼びかけています。
江戸川区で想定される水害の種類と規模
区内で起こりうる水害には、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
内水氾濫: 大雨が排水しきれずに市街地に溜まる現象です。
河川氾濫: 川の水位が上がり、堤防を越えたり、破れたりして街に流れ込む現象です。
大規模水害: 超巨大台風の上陸に伴う高潮の発生や、複数の河川の氾濫によって、江戸川区を含む江東5区の大部分が浸水する恐れがある水害です。
この「大規模水害」は発生確率は低いものの、ひとたび発生すると、江東5区のほとんどの地域が浸水し、人口の9割以上、およそ250万人に影響を与えると想定されています。特に、区内の場所によっては10メートル以上の浸水が1週間から2週間以上続くと予想されており、一度浸水してしまうと、人為的に排水しない限り水が引かないため、非常に深刻な状況となります。
大規模水害時の避難行動:広域避難モード
大規模水害の発生が予想される際には、時間軸に沿って以下の避難行動が示されています。
3日前(72時間前): 江東5区が共同で広域避難の必要性を判断し、住民は避難準備を開始します。この時点で、区外の安全な親戚・知人宅、勤務先、宿泊施設などへ避難する「広域避難」が推奨されます。
◦ 区では、広域避難で区外の宿泊施設を利用した区民に対し、1人あたり3泊まで最大9,000円の費用助成を行っています。
2日前(48時間前): 「自主的広域避難情報」が発表され、広域避難が呼びかけられます。この時点で、高齢者や障害のある方などの「要配慮者」は、速やかに区外の安全な場所へ避難してください。
◦ 区は、一人で避難することが難しい「避難行動要支援者」(約1万5千人)を特定し、名簿や個別避難計画の作成など、避難をサポートする取り組みを進めています。広域避難が難しい場合でも、区内の浸水しない地域(葛西南部地区や小岩地区など)への避難を促しています。
1日前(24時間前): 「広域避難指示」が発令されます。区内に留まった場合、2週間以上の不自由な生活に耐えなければならないため、直ちに区外の安全な場所へ避難するよう呼びかけられます。
◦ どうしても広域避難ができない場合は、浸水しない地域防災拠点(葛西南部地区・国府台台地・大島小松川公園など)に避難します。ただし、これらの拠点は屋外のため、風が弱まるなど安全を確保できるタイミングで移動することが重要です。
9時間前: 「域内垂直避難(緊急)」が発令されます。この時点でも安全な場所へ避難できていない場合は、地域防災拠点や小中学校などの待避施設、近所の高い建物などへ急いで避難します。しかし、ほとんどの退避施設では長期間水が続くことが予想され、孤立し、食料などの備蓄にも限りがあるため、あくまでも緊急の避難先として考えられています。
区は、ホームページ、メール、SNS、アプリ(「江戸川区防災アプリ」ではリアルタイムで避難所の開設状況や混雑状況を確認可能)などで避難情報を発信しますので、常に最新の情報を確認することが重要です。
警戒レベル2(大雨・洪水・高潮注意報)
大規模水害にまで至らない局地的な大雨などの場合も、警戒レベルに応じた避難行動が求められます。
警戒レベル1(早期情報): 気象情報を確認し、災害への心構えを高めます。
警戒レベル2(注意報): いつでも避難できるよう準備を始めます。
在宅避難: ご自宅の浸水状況から安全確保が可能と判断できた場合に選択できますが、浸水が引くまで耐えられる準備が必要です。
個別避難先確保: ご自宅に留まることができない場合は、各自で避難先を確保します。
警戒レベル3(高齢者等避難): 高齢者などの要配慮者や、この時点で避難ができる方は避難を開始します。
警戒レベル4(避難指示): 直ちに安全な場所へ避難を開始します。地域防災拠点や退避施設も避難先となりますが、退避施設はあくまでやむを得ない場合の緊急避難施設であり、1階や2階が浸水する可能性や備蓄の限りがあることに注意が必要です。
警戒レベル5(緊急安全確保): 命を守るため、浸水より高い自宅の居室へ避難します。
ハザードマップには、大規模水害が予想される時とされない時の両方について、各自で避難計画を立てることができる「我が家の避難計画マイタイムライン」が掲載されています。事前にご家族で話し合い、行動を確認しておくことが推奨されます.
備蓄と住民一人ひとりの意識向上
近年の気象状況の変化を受け、行政の努力だけでは防ぎきれない災害があることを前提に、防災アドバイザーの片田先生は、「行政だけではどうにもならない事態も考えなければならない」と指摘し、住民が自ら行動するかどうかが、災害の規模を大きくするか小さくするかの最も重要なポイントであると強調しています。
各家庭では、最低3日間、できれば1週間分の食料や水の備蓄を推奨しています。また、携帯トイレも非常に重要であり、1日最低5回、3日間で15回分の備蓄が推奨されています。区の施設にも備蓄はありますが、十分な量ではないため、ご自身で準備することが基本となります。
水害ハザードマップ改定の主な変更点
今回の改定は、有識者や防災関係機関による「検討委員会」と、区民の意見を反映させるための「意見聴取会」を経て行われました。主な改定内容は以下の通りです。
大規模水害時の対応だけでない掲載内容へ更新しました。

浸水想定の更新: 東京都が令和6年に公表した高潮浸水想定区域図と中川・綾瀬川流域洪水浸水想定区域図に基づき、浸水の深さ、浸水継続時間の図が変更されました。
2つの水害対応モード: 「大規模水害が予想される時(広域避難モード)」と「大規模水害に至らない水害が予想される時」の対応を明確に示しました。
「我が家の避難計画マイタイムライン」の強化: 概要版の10ページと11ページに、両方の避難モードに対応した計画シートを掲載し、事前の話し合いを促しています。
多言語・バリアフリー対応:
◦ 概要版は、日本語版の他、やさしい日本語版、英語版、中国語版が作成され、区のホームページで閲覧可能です。
◦ ハザードマップポケットには、多言語案内用の2次元コードが封入されており、自動翻訳機能で様々な言語で読むことができます。
◦ 視覚障害者向けに、ハザードマップ全体を音声で聞ける「音声コード(ユニボイス)」も記載されています。
大判マップ(全体図): 表面には高潮や各河川(荒川、利根川、江戸川、中川など)の洪水浸水想定の最大値を重ねた図面が、裏面には大規模水害時の広域避難マップが掲載されています。大判マップの表面の右上にある、各河川の浸水想定区域図をご確認ください。これも多言語版が用意されています。
地域別マップ(新設): ご自宅周辺の状況をより詳細に確認できるよう、中央地区、小松川地区、葛西地区、小岩地区、鹿骨地区、東部地区の6つの地区に分け、浸水の深さを示す図が初めて拡大して示されました。
自主避難施設: 避難指示に至らない規模の風水害で、自宅に留まることに不安や危険を感じる方が利用できる施設です。
退避施設(小中学校など): 避難する時間がない、または避難が困難な場合に緊急避難先として開設される施設です。学校の統廃合や、高潮浸水想定区域の変更に伴い、学校の一部で避難できる階層(例えば2階以上、3階以上など)が変更されています。体育館だけでなく、体調不良者の隔離やペット同伴者の受け入れなど、状況に応じて教室も活用される可能性があります。
基準水位の変更: 中川の河川(吉川水位観測所付近)について、堤防整備の進捗に伴い、氾濫危険水位と避難判断水位が60cm高くなりました。
住民からの質問と回答(Q&A形式)
今回の説明会では、住民の皆様から具体的な質問が寄せられました。管理組合や防災会の皆様が住民に伝える上で役立つよう、簡潔なQ&A形式でご紹介します。
Q1: 学校の収容人数と備蓄食料は十分ですか? A1: 学校は平均約1,500人程度の避難生活を想定していますが、備蓄は十分ではありません。最低3日、できれば1週間分の食料、水、携帯トイレなどはご家庭での準備をお願いしています。
Q2: 広域避難中の空き巣対策は? A2: 具体的な話はできませんが、区や警察、消防などの防災機関は、住民が避難する以上、パトロール等で空き巣被害防止に努めます。
Q3: マンションに高齢者や体が不自由な方が多く、強風時の避難が難しい場合は? A3: 区は「避難行動要支援者」(約1万5千人)を把握し、昨年から個別に案内しています。彼らには、広域避難が難しい場合、葛西南部地区や小岩地区など区内の浸水しない安全な場所への避難を促しています。強風になる前に、交通機関(タクシー含む)を使って移動していただくよう案内しています。
Q4: 避難行動要支援者の案内が来ていない場合、申請は必要ですか? A4: 要件に該当する方にはすでに案内済です。特に支援が必要な場合は、区の危機管理部 災害用配慮者支援係(電話: 03-5662-0109)にご相談ください。
Q5: 広域避難ができず、2週間浸水した地域に取り残された場合、どうすれば良いですか? A5: 2週間電気、ガス、水道、トイレが使えない状況で生活するのは非常に困難です。警察、消防、自衛隊の救援活動は行われますが、人口が多いため時間がかかります。健康を著しく損なう可能性があります。このような事態を避けるためにも、広域避難を強く推奨しています。
Q6: 学校の教室も避難場所として利用できますか? A6: はい、体育館だけでなく、状況に応じて教室も活用することを想定しています。体調不良の方の隔離や、ペット同伴者の受け入れなど、安全な避難を確保するための柔軟な対応を行います。
Q7: 津波の被害想定について、区内の高台は安全ですか? A7: 江戸川区では津波による大きな被害は想定していません。南海トラフ地震でも約2m程度の津波と予測されており、現在の堤防は満潮時に2mの津波が重なっても超えることはありません。むしろ高潮の方が想定される高さが高いですが、伊勢湾台風級の高潮にも対応できるよう堤防は整備されています。一番の懸念は、地震で堤防が損傷した直後に高潮が来る場合です。
問い合わせ先
今回の説明会で紹介されたハザードマップの詳細内容や防災対策に関するご質問は、下記までお問い合わせください。
江戸川区危機管理部防災危機管理課
総合窓口: 03-5662-1992
災害用配慮者支援係(個別避難計画など): 03-5662-0109
ハザードマップ本編は、区のホームページでご確認いただけます




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