江戸川区内マンション防災実態調査レポート(2025)
- anzenmanshonproject
- 3 日前
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江戸川区内マンション防災実態調査レポート(2025)
― 29管理組合の回答から見えた“現状と課題” ―
江戸川区マンション協議会では、区内におけるマンション防災の実態を把握するため、2025年10月に29管理組合を対象としたアンケート調査を実施しました。回答者の多くは理事長や理事など、マンション管理の中心を担う立場の方々です。本レポートでは、調査結果から見えてきた「現状」「課題」「求められる支援」を分かりやすくまとめました。
調査目的
項目 | 内容 |
目的 | 区内マンションの防災対策の現状を把握し、行政および管理組合支援の方向性を検討するため。 |
調査方法 | Googleフォームによるアンケート |
対象 | 江戸川区内マンション(29管理組合) |
主な回答者 | 理事長 55%、理事 24%、防災委員等 10%、その他 11% |
1. 防災対策の現状:6割が「不十分」
まず、防災対策の進捗状況について尋ねたところ、
「まあ取り組んでいる」……38%
「あまり取り組んでいない」……45%
「全く取り組んでいない」……14%
と、「十分に取り組めている」と答えたマンションは全体のわずか3%。
6割近くが“防災対策は不十分”と回答する結果でした。特に、備蓄や初動マニュアル、防災組織など、本来命を守るために重要な仕組みが整っていないケースが目立ちます。
「何をすればよいか分からない」「理事交代で継続できない」といった声も多く、仕組みの不在が課題として浮かび上がりました。
2. マンション防災の認識:概念理解は進むが“行動”に落ちていない
防災の基本認識については、概ね理解が進んでいます。「在宅避難が可能」「修復工事が必要になる」といった概念は7〜9割が理解している一方で、
被災時にどんな対応が必要か
マンションがどのような被害を受け得るか
といった、より“具体的な行動レベルの理解”は半数程度にとどまりました。
特に、災害直後の「排水の使える・使えない判断」「エレベーターの扱い」「避難の可否判断」など、初動時に必要な知識が住民に共有されていない点が課題といえます。
3. 防災対策の進捗状況:ハード中心で、ソフト対策が遅れ
複数回答による進捗状況では、
防災備品整備(72%)
防災訓練の実施(55%)
地震保険の加入(52%)
など、比較的進んでいる項目もあります。しかしその多くは“一度決めれば済む対策”で、継続的に回すべきソフト面は遅れが目立ちました。
特に、
要支援者名簿(14%)
コミュニティ形成(24%)
在宅避難の周知(17%)
家具転倒防止対策(21%)
など、住民の協力や合意形成が必要な対策が弱いことが分かります。共助が求められるマンション防災において、非常に大きな課題です。
4. 進まない原因:人手不足・知識不足・継続性の欠如
防災が進まない理由として挙げられたのは、
住民の防災意識・参加の低さ(38%)
何をすればよいか分からない(31%)
防災に詳しい理事がいない(28%)
防災組織がない(28%)
理事交代で継続しない(24%)
と、人的リソースやノウハウの不足が中心でした。
自由記述でも、
「担当理事が1年交代で引き継がれない」「高齢化が進み、担い手がいない」「管理会社任せで住民の参加が進まない」
といった声が寄せられています。
5. 支援ニーズ:最も多いのは「助成」「マニュアル」「伴走支援」
マンションが行政や関係団体に求める支援としては、
自主防災組織登録・助成制度(59%)
防災マニュアル作成支援(45%)
セミナー・講習会(41%)
成功事例紹介・視察(34%)
アドバイザー派遣(31%)
などが上位に挙がりました。
特に「何をすればよいか分からない」という課題に直結する“具体的なノウハウ提供”と“伴走支援” が強く求められています。
まとめ:今必要なのは「最初の一歩を踏み出す支援」
今回の調査から、江戸川区内のマンションでは、「防災の必要性は理解しているものの、実際の行動に結びついていない」という構図が明確になりました。
その背景には、担当者の負担、継続性の欠如、知識不足、住民意識の差など、複数の課題が重なって存在します。
これらを乗り越えるには、・標準化されたテンプレート(マニュアル・初動カード)・専門家による伴走支援・助成制度の活用・成功事例の共有といった、“最初の一歩を後押しする仕組み”が不可欠です。
マンション協議会としても、区や専門団体と連携しながら、マンションが自ら備えを進められるよう、引き続き情報提供と支援を行っていきます。




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