【マンションコミュニティの新たな光】コープ南砂「助け合いの会」に学ぶ、持続可能な暮らしの取り組み
- anzenmanshonproject
- 2025年9月16日
- 読了時間: 8分

マンションにおける暮らしは、築年数の経過とともに住宅設備の⽼朽化、そして居
住者の⾼齢化という共通の課題に直⾯します。特に、⼊居から30 年を過ぎたマンシ
ョンでは、⾼齢者の介護予防や⽇常⽣活⽀援、さらには防災・環境保全といったコ
ミュニティ活動の活性化が喫緊の課題となっています。こうした中で、住⺠が「で
きること」で互いに⼿を貸し合う「助け合い活動」が全国各地で注⽬を集めていま
す。介護保険制度や公的福祉サービスだけではカバーしきれない⽀援を、住⺠の相
互扶助で補い合おうという試みです。
今回ご紹介する「コープ南砂」は、築45 年を迎える全165 ⼾の中規模集合住宅であ
りながら、活発なコミュニティ活動を展開し、その中⼼に「助け合いの会」を据え
ることで、居住者が⼼豊かに、安⼼して暮らせるモデルケースを築き上げていま
す。
築45年のマンションが育む「助け合いの文化」
コープ南砂の「助け合いの会」は、単に困り事を解決するだけでなく、「居住者が心豊かに、安心・安全に暮らせる住み良い集合住宅づくり」「お年寄りから子どもまで、居住者の居場所と出番のあるコミュニティ活動」という二つのキャッチフレーズを掲げ、コミュニティ全体の活性化を目指しています。
この会は2006年に自治会の呼びかけで設立された会員制の互助会組織で、現在、自治会会員世帯の約95%にあたる142世帯が加入しています。設立の背景には、入居から25年が経ち、電球交換や蛇口の修理、網戸の取り付け、粗大ごみの搬出など、日常生活における「ちょっとした手助け」の要望が増加したことがあります。当初はボランティアで対応していましたが、無償では謝礼に気兼ねが生じることから、利用料金を設定した会員制組織へと移行。これにより、「助ける」「助けられる」の一方的な関係ではなく、「会員はできることで手を貸し合う」相互扶助の理念を大切にしています。
「助け合いの会」が提供する具体的な活動は多岐にわたります。

1. 保守修理: 住宅設備の不具合点検、水栓器具や照明などの交換、網戸の取り付けなど。特に築年数の古いマンションでは、製造中止になったサッシ用クレセントの交換や、元々網戸がなかった住戸への取り付けなど、専門業者でも対応が難しい問題を住民のノウハウで解決しています。
2. 家事支援: 粗大ごみの搬出、包丁研ぎ、買い物代行、食事の支度など、日常生活の負担を軽減します。包丁研ぎは年4回開催され、毎回40本前後の申し込みがある人気ぶりです。
3. 外出支援・介助支援: 買い物や病院、役所等への車での送迎や付き添い、散歩の付き添い、車椅子介助、話し相手など。特に話し相手となることで、高齢者の安心感を高める重要な役割を担っています。
4. 子育て支援: 子ども向けイベント(ハロウィン、クリスマス会、セミの観察会など)の開催、保育園等への送迎、子供の一時預かりなどを行い、高齢者と子どもの多世代交流を促進しています。
5. 相談活動: 住宅設備の改修・リフォーム相談、各種契約手続きの相談、その他日常的な生活相談に応じ、マンション特有のノウハウを共有しています。
6. 親睦活動: 「ふれあい喫茶室」や趣味のグループ活動、ハイキング、観桜会、講習会などを通じて、会員相互の心身の自立を促し、生きがいづくりを支援します。特にふれあい喫茶室では、お茶会だけでなく生活関連情報の提供や、高齢者の安否確認の場としても機能しており、参加者の約半分がこうした見守りの対象となる人々です。
さらに、コープ南砂のコミュニティ活動は「助け合いの会」に留まりません。
生ごみリサイクルの会: 敷地内の畑で生ごみを堆肥化し、土壌改良を行うことで、夏には多くのセミが発生し、子どもたちの観察会が開かれるなど、環境教育にも貢献しています。
南砂線路公園の環境を守る会: 居住者が自主的に公園の草むしりや花の水やりを行い、美しい環境を維持しています。

防災委員会: 住民自身による災害協力隊を組織し、全居住者を対象とした防災訓練や、要援護者名簿の作成、個別避難計画の策定を行うなど、災害対策にも力を入れています。
運営の秘訣:自主管理と地域連携、そして「人」の力
コープ南砂の助け合い活動を支えるのは、その独自の運営体制と、活動に情熱を注ぐ住民一人ひとりの存在です。
コープ南砂は、管理員の受付・巡回業務と清掃員の日常清掃業務を除き、居住者による自主管理を行っています。これは、デベロッパー系の管理会社による管理では、大規模修繕工事などがグループ会社に回りがちであるという経験から、管理会社を見直した結果です。自主管理は会計業務や業務全般の負担が増えるものの、コスト削減と透明性の確保につながり、大規模修繕積立金も確保できています。
「助け合いの会」の運営は、13人の運営委員会と事務局が担い、管理組合・自治会・防災委員会とも密接に連携しています。自治会役員には「互助会担当」が置かれ、会の運営委員会に出席することで、活動が組織全体で支持される体制を構築しています。
財政面では、入会金(3千円)と年会費(千円)、利用料(30分350円、うち300円は支援者に、50円は会の運営費)で賄っています。この有償ボランティア制度は、支援者への正当な報酬を保証しつつ、利用者が気軽にサービスを利用できる価格設定となっています。
活動を円滑に進める上で不可欠なのが、ニーズの把握と人材確保です。会の設立時には居住者アンケートを実施し、92%が「必要」と回答するなど、高い賛同を得ました。支援者となる住民は、自身の得意な分野を登録し、事務局長が依頼内容に応じて最適な人材を割り振ります。新しく入居した若者には、まず防災委員への登録を促し、活動への参加を通じてその人の能力を見極めるなど、意図的な人材育成も行っています。
また、コープ南砂では高齢者の見守り活動に特に力を入れています。管理員の巡回点検に加え、「助け合いの会」の声かけ活動、親族への定期連絡の働きかけ、緊急時連絡先カードの作成・配布など多層的な見守り体制を構築しています。特に、防災委員会が作成する「避難行動要支援者名簿」は、個別面談を通じて作成され、災害時の安否確認だけでなく、日常の見守りにも活用されています。孤独死対策としては、親族に毎朝の連絡を奨励し、万一連絡が取れない場合は迅速な安否確認を行っています。
これらの活動運営においては、個人情報の保護、プライバシー保護、トラブル防止策が会則に明記されており、細心の注意が払われています。単身高齢者宅への訪問は2人1組で行い、個人的な依頼・支援の禁止、利用料以外の金品の授受禁止など、具体的なルールが定められています。
「社会を変えたい」情熱が築く、持続可能な未来
コープ南砂のコミュニティ活動の中心人物の一人が、助け合いの会事務局長である小林孝氏です。社会変革を目指する熱い情熱を抱く小林氏は「市民社会が成熟しない限り世の中は変わらない」という信念のもと、マンションコミュニティの活性化に尽力してきました。高齢でありながらも、ニーズの仕分け、支援者の割り振り、新人教育など、多岐にわたるマネジメント業務を一人でこなし、そのエネルギッシュな活動は、他のコミュニティ活動家からも尊敬を集めています。

コープ南砂には小林氏だけでなく、理事長を務めた除村氏や、防災委員長など、多様な経歴と情熱を持つ住民が活動を支えています。みなさんが「できることをやる」という強い参加意識を持ち、高齢になっても活発に活動に参加し続けています。また、中国人や韓国人、イギリス人など、多国籍の居住者が増える中でも、通訳を立ててコミュニティに組み込む柔軟な姿勢も、コープ南砂の魅力です。
コープ南砂は、「100年住宅」を目指すという長期的なビジョンを掲げ、大規模修繕計画や配管更新工事などを自主管理で計画的に進め、質の高いメンテナンスを実現しています。これは、次の世代に負担をかけないよう、現世代が責任を持って取り組むという強い意識の表れです。
あなたのマンションも「助け合いのコミュニティ」を
コープ南砂の事例は、マンション管理組合やコミュニティ活動の立ち上げを検討している皆さんにとって、大きなヒントとモチベーションを与えてくれるでしょう。
コープ南砂の成功の鍵は、以下の点に集約されます。
「強制しない」という原則: 住民の自発的な参加を促し、無理なく活動できる環境を整えることが、持続可能なコミュニティを築く土台となります。
既存組織との連携とニーズ把握: 管理組合や自治会を主体として、アンケート調査で居住者のニーズと、支援できる人材(得意なこと)を明確に把握することから始めましょう。
できることから着実に: 初めから全てを完璧にしようとせず、小さな活動からでも、確実に成果を出していくことが重要です。
ルールと透明性の確保: 個人情報保護、プライバシー保護、トラブル防止のための明確なルールを会則に明記し、活動の透明性を保つことが、住民の信頼を得る上で不可欠です。
「人」への投資: 意欲ある人材を見つけ、育成し、多様なバックグラウンドを持つ住民が活躍できる場を提供することが、コミュニティを豊かにします。
行政や他団体との連携: 自助・共助を基本としつつ、公助や地域の社会福祉協議会、ボランティアセンターなどとの連携も積極的に行いましょう。
コープ南砂の住民たちは、「地域社会の成熟」という大きな目標を掲げ、日々の地道な活動を通じて、マンションという限定された空間を超えた、豊かな人間関係と持続可能な暮らしのモデルを創造しています。その姿には、「自分たちの住む場所を、自分たちの手でより良くしていく」という強い意志と行動が、いかに大きな変化を生み出すかを教えてくれます。
今日から「助け合いのコミュニティ」づくりを考えてみませんか。 コープ南砂の「助け合いの会」が築き上げた温かい絆と確かな仕組みは、きっと私たちマンション住民の背中を押してくれるはずです。




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