【8月定例会】高齢化・高経年化時代のマンション管理組合運営 ―現場から見えた課題と対応策―
- anzenmanshonproject
- 9月27日
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マンションにおける住民の高齢化や建物の老朽化が進む中、管理組合の運営体制や地域との関係性にも変化が求められています。今回の会合では、「役員の成り手不足」や「認知症居住者への対応」、「コミュニティの希薄化」といった現実的な課題に対し、実態に即した報告や討議が行われました。現場の知見をもとに、今後の管理組合運営をどのように支えていくかを考える貴重な機会となりました。 はじめに
事前アンケートの結果と過去の定例会での議論内容が紹介され、住民の高齢化と管理組合運営への関心の高さが再確認されました。
「高齢化=成り手不足」は正しいか?
次に、「高齢化が役員の成り手不足につながっているのか」という問いが提起されました。国の調査データをもとに分析された資料では、高齢化を原因とする決めつけには注意が必要であることが示されました。実際、高齢の方が役員を積極的に担っている事例もあり、成り手不足の背景には仕事や家庭の事情、健康状態など複数の要素が絡んでいることが分かりました。役員の負担を軽減するサポート体制や、柔軟な役割分担の工夫が重要であるとの認識が共有されました。
認知症居住者への対応と管理組合の役割
続いて、認知症の居住者に対する管理組合の対応について報告がありました。日常生活におけるトラブルや、防災面でのリスク(漏水・失火)、財産管理の問題(独居者の場合の相続など)など、さまざまな課題が指摘されました。
これらに対する管理組合の取り組みとして、以下のような工夫が紹介されました。
認知症対応マニュアルや要支援者名簿の作成
福祉担当理事の設置と組織体制の整備
駐車場や郵便物の取り扱いに関する使用細則の見直し
スロープ設置や段差の解消などハード面での対応
行政機関との連携、ハンドブックの活用
また、「認知症サポーター」の役割については、自治会との棲み分けが必要であることが確認されました。法的に組織された管理組合がどのように対応していくか、地域の実情に応じた柔軟な考え方が求められています。
グループ討議で見えた実感と課題
後半では、3つのグループに分かれ、「役員の成り手不足」「管理組合機能の低下」「高経年化」「資金計画」「地域連携」などをテーマに討議を行いました。
各グループからの発表では、以下のような意見が共有されました。
役員の成り手不足については、実際に深刻な状況とまでは感じていないという声が多く、高齢者の方が参画意欲を持っている傾向も確認されました。
技術継承の不安としては、設備に詳しい高齢者が抜けた後の知見の空白が課題とされ、今後の修繕計画への影響が懸念されています。
高経年化への対応は、長期修繕計画が整備されているものの、物価上昇率の反映が不十分なケースもあり、今後の見直しが必要とされました。
コミュニティの維持については、自治会の機能が福祉・見守りの面で重要であり、地域ごとに異なる自治会の位置づけや加入率を踏まえた上での対応が必要であることが確認されました。
また、地域独自の見守りサービスや福祉支援の仕組みをうまく活用することで、管理組合の負担を減らしながら、住民の安心につなげていく可能性が示されました。
変化に応じた柔軟な運営を目指して
今回の会合では、高齢化を一律に「問題」と捉えるのではなく、実態に応じて冷静に分析し、多様な居住者と共に運営していく視点が重要であることが確認されました。住民一人ひとりの状況を尊重しながら、制度の整備、地域との連携、若年層の参画促進といった多面的な取り組みが、これからの持続可能なマンション運営にとって不可欠となります。今後も、管理組合の知恵と工夫を重ねながら、変化に強いコミュニティづくりが求められます。




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