第30回防災まちづくり大賞 日本防火・防災協会長賞を受賞ーアリーナコーストの防災の取り組み
- anzenmanshonproject
- 4月4日
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更新日:4月7日

被災地熊本の教訓を活かした「大規模地震災害」に備えるマンション防災の取り組み
江戸川区の分譲マンション「アリーナコースト」の防災活動が、総務省消防庁が主催する第30回防災まちづくり大賞において「日本防火・防災協会長賞」を受賞しました。評価されたのは、東日本大震災を機に発足した防災委員会による13年間に及ぶ継続的な取り組みです。特に、432世帯という大規模マンション全世帯を対象とした「フロア担当制度」や、熊本地震の教訓を自分事化して開発された「マンション地震対応箱」「初動対応アクションカード」の導入など、実践的な備えが注目を集めました。希薄になりがちな集合住宅のコミュニティを防災を通じて再構築し、誰もが動ける体制を実現した本事例は、これからの時代の防災モデルとして高く評価されています。

地域防災の先駆的モデルとして高く評価
「防災まちづくり大賞」は、阪神・淡路大震災を契機に平成8年度に創設された全国的な表彰制度です。地域に根ざした団体による優れた防災の取り組みを顕彰し、全国に紹介することで、災害に強い安全なまちづくりを推進することを目的としています。
今回、日本防火・防災協会長賞を受賞したアリーナコースト管理組合防災委員会の取り組みは、2012年から13年以上にわたり積み重ねられてきたものです。審査委員長を務めた明治大学の山本俊哉教授は、今回受賞した各団体の活動を「これからの時代のモデルになるもの」と評し、地域コミュニティのつながりが弱まる現代において、次のステップへ踏み出すための大きな後押しとヒントになる事例であると述べています。
13年継続、延べ1300人が参加する「フロア担当制度」
アリーナコーストの活動の核となるのは、432世帯全居住者を巻き込む「フロア担当制度」です。この制度には、大規模マンションならではの工夫と継続の仕組みが組み込まれています。
住民参加の仕組み: フロア担当は3ヶ月交代の輪番制で行われます。1フロア約10世帯が3年間で一巡するように設計されており、多くの居住者が防災活動に直接触れる機会を得ています。
多様な参加者: 分譲・賃貸の区別なく担当を設定している点が大きな特徴です。これにより、居住年数や年齢層に関係なく多様な住民が参加し、防災に留まらないマンション全体のコミュニティ形成に寄与しています。
圧倒的な実績: 13年間の継続により、説明会への延べ参加人数は1300名を超えました。
この制度により、災害時に「何をしたら良いかわからない」という不安を抱えていた住民たちが、自らのフロアの安否確認を行えるようになるなど、実効性の高い共助の体制が構築されています。
熊本地震の教訓を「自分事化」した実践的な備え
アリーナコーストの取り組みが特に優良事例として挙げられた理由は、被災地の経験を学び、それを具体的な対策に反映させている点にあります。
防災委員会のメンバーは、平成28年熊本地震の被災地を実際に訪れました。資料による学習だけでなく、被災者との直接的な対話を通じて、発災時から在宅避難生活、そして復旧・復興に至るまでの過酷な現実を学びました。この「被災経験の継承」により、以下の具体的な防災ツールが誕生しました。
1. アリーナコースト版「マンション地震対応箱(MEAS)」
大規模地震発生時に「誰が・何を」すべきかを視覚化した独自の対応箱です。ロビーのAED BOX内に設置されており、パニック状態でもこの箱を開けることで、誰もが初動対応を開始できるよう工夫されています。

2. 初動対応アクションカード
災害対策本部の立ち上げまでの流れを明快な色使い、大きな文字、シンプルなイラストで表現した指示書です。「明快だから、被災時に動ける、助かる」をコンセプトに、現場で迷わないための工夫が施されています。

評価コメントにみる「継承と協働」の価値
審査委員の熊本大学竹内裕希子先生に評価コメントをいただき、アリーナコーストの取り組みが単なる「ものづくり」に留まらず、平成28年熊本地震時のマンションが経験した課題と教訓を学び「ひとづくり」や「ことづくり」として機能している点が着目されました。
評価のポイント | 詳細内容 |
実動的な訓練と継続 | フロア担当制度を13年間続け、理事会とフロア担当が連携し、被災時に住民で対応できるよう「地震発生時訓練」を継続的に実施している点。 |
コミュニティ形成 | 集合住宅において希薄になりがちな住民同士の関係を、防災活動を通じて「実行可能な協働体制」へと変えた点。 |
被災地の教訓を対策に反映 | 被災地での課題や教訓を学びを自分事化し、具体的な対策「マンション地震対応箱」へ昇華させたプロセスが、全国的な優良事例である点。 |

地域全体を巻き込む広がり
アリーナコーストの活動はマンション内だけに留まりません。江戸川区内のマンションとして初めて「地区防災計画」を江戸川区危機管理部に提出・登録するなど、行政や地域のマンションとも積極的に連携しています。また、東京都の「東京とどまるマンション」への登録や、広報紙「防災かわら版」の発行(累計54号)を通じて、在宅避難の推進や自助の啓発にも注力しています。
「住民一人ひとりの参加が、この名誉ある受賞につながりました」という関係者の言葉通り、アリーナコーストは、楽しみながら防災力を高める「防災フェスティバル」なども通じて、これからも住民と共に「災害に強い安全な暮らし」を追求し続けていくことを期待したいと思います。




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