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松江2丁目に学ぶ!マンションと町会で築く地域防災:連携の秘訣と実践へのヒント

更新日:8月28日

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近年、大規模災害の脅威が増す中、地域全体の防災力向上が喫緊の課題となっています。特にマンションが林立する都市部では、管理組合や防災会、そして町会との連携が不可欠です。今回は、マンションと町会が一体となり、独自の地区防災計画「タスカル」を策定し、実践的な訓練を継続することで地域防災を大幅に強化している江戸川区松江2丁目の成功事例をご紹介します。これからマンションと町会の連携を進めたいと考える皆様へ、具体的なアプローチと実践へのヒントをお届けします。


はじめに:なぜ今、マンションと町会の連携が必要なのか

マンション単独での防災活動には限界があり、地域の災害対応力を高めるためには、町会との連携が不可欠です。地域全体で情報を共有し、協力体制を築くことで、災害発生時の「自助」「共助」を強化し、一人でも多くの命を救うことにつながります。松江2丁目では、この連携を約8年前から実施し、地域全体の防災力を飛躍的に向上させています。


1. 松江2丁目における「町会とマンションの連携」成功事例

松江2丁目では、以前はマンション単独で行われていた防災訓練を、町会と共同で実施することで、地域防災活動を大きく強化してきました。この取り組みは、他の地域にとって模範となるものです。

1.1. 連携のきっかけと推進役:マンション側の積極的関与が鍵

連携の始まりは、当時の町会長がマンションの状況を把握しており、「マンションと町会で何か一緒にできないか」と働きかけたことがきっかけでした。初期の活動では、消防署から貸し出されるスタンドパイプの使用訓練が連携のきっかけの一つとなっています。

この連携を強力に推進したのは、マンション側の防災担当者である吉田氏と、町会副会長の山本氏でした。特に吉田氏は「企画から実動のところまでは、吉田さん中心としたマンションで対応。そうでないとついてきてくれないです」と述べており、マンション側の主体的な動きが活動の継続に不可欠であることを示唆しています。

地域全体の協力体制も重要です。防災訓練の際には道路封鎖が必要となるため、近隣の約20軒に挨拶回りを行うなど、地域住民の理解と協力を得る努力が払われています。また、外国人住民も訓練に参加するなど、多様な住民を巻き込むことにも成功しています。さらに、消防署や区の危機管理室とも密に連携しており、消防署からは訓練に担当者を派遣してもらうなど、積極的な協力が得られています。長年の連携により、警察との信頼関係も構築されています。

1.2. 地域住民が主体となる「地区防災計画タスカル」の策定

松江2丁目では、地域住民が主体となって「タスカル」と名付けられた独自の地区防災計画を策定しています。これは、区が策定する地域防災計画とは一線を画す、地域の実情に根ざした計画です。

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  • 理念と策定背景:災害関連死ゼロを目指して 「タスカル」の理念は、「災害時にみんなが助かる。1人も死者を出さない。災害関連死も出さない」という明確な目標を掲げています。災害発生時に地域住民が互いに助け合う「共助」を目的としています。策定のきっかけは、2019年の台風19号でした。区議会議員の間宮氏が地区防災計画の必要性を提唱し、吉田氏や山本氏をはじめとする地域住民が賛同して策定が始まりました。当初は「地区防災計画って何ですか?作ってどうするのですか?」という段階から、対話を重ねて具体的な計画へと落とし込んでいきました。

  • 具体的な活動内容:本部機能と「タスカルマップ」 地域住民は協力して、街歩き、訓練、避難訓練などを通じて計画を具体化しました。特に、町会館を災害時の本部とし、地域全体の状況把握、初期消火、救出救護、物資配給などを行う体制を構築しています。避難所である小学校や中学校との連携も視野に入れつつ、本部機能を町会館に置くことを重要視しています。 この計画には、中学生から80代までの幅広い年代の住民がコアメンバーとして参加し、多様な視点を取り入れています。 さらに、「タスカルマップ」と呼ばれる独自の防災マップを作成しています。このマップには、避難場所、AEDの設置場所、消火器の場所などが記載されており、地域住民が自費を投じることなく、通信社の協力を得て作成されました。このマップは、地域の防災弱点(消火器不足、AED不足など)を可視化する役割も果たしています。

  • 区からの評価と今後の展望 「タスカル」は、江戸川区内で10例目の地区防災計画として認定されました。東京大学の片田教授も「行政がやるだけでは絶対に間に合わない」からこそ、地域の人が「自分たちでこうやる、自分たちで助かる」という取り組みが非常に重要だと高く評価しています。現在は地震編が完成しており、今後は水害編の策定にも取り組む予定です。

1.3. 実践的な震災訓練と住民の防災意識向上

松江2丁目では、毎年6月に本格的な震災訓練を実施しています。

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  • 計画的な訓練と多角的なアプローチ 消防署とも連携し、毎年9月か10月には翌年の訓練内容を消防署に伝え、スケジュールを調整しています。これにより、消防署からも担当者(転勤しない担当者)が継続的に協力しており、円滑な訓練実施につながっています。 訓練は参加型を重視しており、「みんなで体験してもらう訓練にするには起震車を予約すること」と、新規参加者が実際に体験することの重要性を強調しています。ポンプ車やレスキュー隊との連携訓練だけでなく、VR(仮想現実)車を活用した訓練も取り入れ、最新技術も積極的に活用しています。

  • 自助努力の徹底とマンション内設備の理解 訓練では、「グラっときたらまず自分を守って、揺れが止まったらすぐ火を消して、ブレーカーを落としてと、発災後の対応を説明しています」と、個人の自助努力の重要性を繰り返し説明しています。 マンション内の火災報知器やインターホンシステム、各階の消火器の場所や使い方についても、住民向けに説明会を実施し、初期対応能力の向上を図っています。火災発生時には管理人が現場確認を行う義務がありますが、一人では限界があるため、各階担当の住民が火災現場を確認する訓練も毎年実施しています。 消防署からの指導の下、スタンドパイプの訓練も実施しており、これは消火だけでなく、給水目的での活用も視野に入れています。ただし、道路封鎖や水道局、警察、消防署への許可申請など、事前の準備が必要です。

  • 訓練後の検証と改善 訓練後には「混乱覚悟の上で」「何が混乱したのかという点を検証しようと」と、訓練を通じて発生した混乱を検証し、次回の改善に繋げるPDCAサイクルを重視しています。

1.4. 町会への加入促進と「人的つながり」の強化

松江2丁目のマンションでは、町会との連携を強化するため、住民の町会加入にも力を入れています。当初はマンション全体で町会に加入する形でしたが、現在は任意の加入となっています。それでも積極的に加入を促し、多くの住民が町会活動に参加しています。

月300円の会費があり、情報提供は回覧板、掲示板、松江通信(広報誌)、LINE公式アカウントなど多様な媒体で行われています。活動としては、防犯部や子ども会などの部活動への参加が任意で、地域の祭りや行事にも参加を促しています。 こうした活動を通じて、マンションの住民が町会の各部に所属し、活動に参加することで、人的な繋がりが生まれており、これが防災活動の強固な基盤となっています。


2. これから連携を始めるためのヒントと実践的アプローチ

松江2丁目の事例は、マンションと町会の連携が地域防災力を高める上でいかに重要であるかを示しています。これから連携を始めたいと考えている方々に向けて、具体的なヒントとアプローチをまとめます。

2.1. まずは「対話」から:目的の共有と小さな一歩

連携の第一歩は、双方の代表者が顔を合わせ、対話を始めることです。松江2丁目でも「地区防災計画って何ですか?作ってどうするのですか?」といった段階から、対話を重ねて「こういうのを作ろうよ」と具体化していきました。 まずは、「なぜ連携が必要なのか」「何を達成したいのか」という共通の目的意識を持つことが重要です。最初から大きな計画を立てるのではなく、例えばスタンドパイプの使用訓練など、比較的手軽で具体的な活動から始めてみるのも良いでしょう。

2.2. 推進役の特定とマンション側の積極性

連携を成功させるためには、双方に「旗振り役」となる推進役の存在が不可欠です。特に松江2丁目では、マンション側の担当者が企画から実動までを主導することで、活動の継続性を確保しています。マンション内で防災に関心のある理事や住民を見つけ、その方を起点とすることが有効です。

2.3. 地域全体の理解と協力を得るための工夫

防災訓練の実施には、道路封鎖など近隣住民の協力が不可欠な場合があります。松江2丁目では、近隣への挨拶回りを通じて理解を求めています。また、外国人住民も含め、多様な住民が参加できるような工夫を凝らすことで、地域全体の防災意識を高めることができます。地域のお祭りやイベントなどを通じて、日常的に住民間の交流を深め、「顔の見える関係」を築くことが、災害時の「共助」の基盤となります。

2.4. 行政・消防との連携を深める

地元の消防署や区の危機管理室とは、積極的に連携を図りましょう。訓練内容の相談や、担当者の派遣を依頼するなど、行政の協力を得ることで、訓練の質を高め、信頼関係を構築することができます。松江2丁目の事例のように、長年の連携によって行政との信頼関係が深まり、円滑な協力が得られるようになります。

2.5. 「人的つながり」を築くための地道な活動

マンション住民の町会への加入は、連携を深める上で非常に重要です。 町会に入っていないマンションに対しては、管理会社を通じて理事会に働きかける、マンションの管理人に協力を依頼する、地域イベントを通じて住民と交流を深め、町会への加入を促すなどの地道な声かけ活動が有効です。松江2丁目では、町会への加入がマンション住民と町会との「人的つながり」を生み出し、これが防災活動の基盤となっていると強調されています。

2.6. 課題への挑戦と継続的な改善

連携の取り組みを進める中で、垂直避難の難しさや、避難所運営協議会の活性化といった課題に直面することもあります。松江2丁目の事例では、町会が本部機能を担うことで、地域住民が主体的に関わる体制を構築し、避難所運営協議会の課題を補完しています。 また、訓練後には「何が混乱したのかという点を検証しようと」混乱を覚悟の上で振り返り、次回の改善に繋げるPDCAサイクルを回すことが重要です。「行政がやるだけでは絶対に間に合わない」という認識のもと、地域住民が「自分たちで助かる」という意識を持って、継続的に計画を見直し、活動を改善していくことが、強靭な地域防災力を築く鍵となります。


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おわりに:地域全体で築く強靭な防災力

松江2丁目の防災への取り組みは、町会とマンションの積極的な連携、住民が主体となって策定した地区防災計画「タスカル」、そして実践的な震災訓練の継続によって、非常に高いレベルに達しています。特に、住民間の「人的つながり」が活動の原動力となっており、これは他の地域が防災力向上を目指す上で、多くの示唆と具体的なモデルを提供しています。垂直避難や避難所運営協議会の活性化といった課題はあるものの、継続的な改善と地域住民の協力を通じて、さらなる防災体制の強化が期待されます。ぜひあなたの地域のマンションと町会でも、松江2丁目の成功事例を参考に、連携の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

 
 
 

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​江戸川区内マンション協議会は、江戸川区内にあるマンションの管理組合が加入している非営利団体です。協議会では、毎月近隣マンションの管理組合が参加し、マンション管理に関する情報交換を行っています。

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