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執筆者の写真anzenmanshonproject

国が進めるマンション政策




実施概要


日時:令和3年(2021年)10月24日(日)

場所:葛西区民館 集会室第2・3

参加:マンション協議会 会員


山野井建築設計工房一級建築士事務所

一級建築士 山野井武様


高経年マンションが増加する課題

マンションストック数は現在654万戸で、国民の1割がマンションの住んでいます。中でも大都市圏に集中し1都3県で324万戸と53%をしめています。中でも、地区40年越えのマンションは81万戸、10年後には198万戸と倍増し、20年後には367万戸と高経年マンションが増加する見通しです。一方、マンションの建て替えの実施状況は1.9万戸にとどまっています。こうした中で、適切な維持管理が行われず、居住者・近隣住民などの生命・身体に危険を生じるマンションが発生しています。高経年マンションでは、区分所有者の高齢化・非居住化が進行し、管理組合の担い手不足や総会運営や集会のの議決が困難などの課題を抱えているものも多くあります。




大規模マンションが抱える課題

 最近では、タワーマンションの出現に象徴される大規模化、設備の高度化・複合用とかに伴いマンション管理の専門家・複雑化も進んでいます。マンションの維持管理に係る区分所有者の合意形成の困難性は、マンションの規模によって増大し、資金不足によって適切な修繕維持が行われない場合の影響が大きくなります。




適切な長期修繕計画の不足、修繕積立金の不足

高経年マンションにおける修繕不足の懸念

 計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて、積立修繕金の額を設定しているマンションは増えているものの、平成30年で54%にとどまっています。現在の積立金が計画に不足しているマンションも35%にのぼります。高経年マンションでは、ハード面の老朽化などが進み、生命・身体・財産に関する問題を抱えるものが多い。大規模修繕工事の周期を12年程度とすると、築40年以上マンションの4割、築30年以上マンションの2割で、適時適切な大規模修繕が実施されない可能性があります。


建替事業における事業採算性の低下

マンションを建て替える際の、区分所有者の平均負担額は近年増加傾向、老朽化マンションの更新について、経済的負担などの理由で事業の成立性がより厳しくなります。


新耐震基準マンションの高経年化

今後は、新耐震基準マンションの高経年化も進む。小規模なマンション建て替え事例はあるが、大規模なマンション建て替えが検討時期に入っていくと予想される。団地型マンションの建て替えニーズの多様化が進む。団地型マンションの建て替え事例の4割に、再生にあたっての行政の関与が行われています。


マンションの適正管理及び再生に関する現行の政策

 マンションの管理義務関係や維持管理及び再生に関する基本ルールは、「区分所有法」で原則が定められています。販売は宅建業法、居住・管理・修繕・改修については「マンション管理適正化法」、建て替え住み替えは「マンション建て替え法」がある。こうしたマンション再生手法には、特例の枠組みが設けられています。


マンションの適正管理及び再生に関するこれまでの主な取り組み

マンションの適正な管理に関する主な課題は、「専門知識の不足」「管理組合の担い手の不足」「所有者の多様化」「管理水準維持向上へのインセンティブの不足」「管理組合の取り組みを支える公的主体の関与の不足」が指摘されている。こうした中で、管理組合を支える体制の構築、管理組合における外部専門家の活用の円滑化、管理状況の開示のルールの整備などが進められてきました。

マンションの修繕に関する主な課題は、「長期修繕計画の不足」、「修繕積立金の不足」、「発注に関する専門知識の不足」、「占有部分への影響」などがあり、長期修繕計画の作成支援や修繕の資金確保への支援、立ち入りルールの整備などに取り組んできました。




マンションに関する各種事業

各省庁が取り組んでいる事業を見ると下記のような事業があります。





国土交通省

「マンション管理適正化・再生推進事業」「マンションストック長寿命化等モデル事業」「優良建築物等整備事業」「長期優良住宅化リフォーム推進事業」

環境省

「既存住宅における断熱リフォーム支援事」

経済産業省

「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」


各種事業の説明

セミナーでは、各種事業やガイドラインの改正について説明が行われました。


9つの事業を紹介

マンション管理適正化・再生推進事業
管理計画認定制度
管理計画認定の手続き
マンションストック長寿命化等モデル事業
優良建築物等整備事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅認定
集合住宅の省CO2化促進事業
住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業

ガイドラインの改正

標準管理規約ガイドラインの改正

長期修繕計画ガイドラインの改正

修繕積立金に関するガイドラインの改正


マンション管理適正化・再生推進事業

マンション管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(概要)があり、基本方針の基準(概要)として、助言・指導・勧告を行う判断基準の目安や管理計画認定の基準について触れました。また法律の動向が紹介されました

改正マンション管理適正化法

  • 「マンション管理適正化推進計画」を各自治体が創設出来る。

  • 上記の中で「管理計画認定制度」が実施出来る 2022年4月1日施行

マンション建て替え円滑化法

  • 「特定要除却認定」に関する規定が施行

  • 2021年12月20日 施行


管理計画認定制度

  • 中古マンション流通の活性化を目的としたもので各自治体が創設する

  • お墨付きのような捉え方であるが、その基準を見るとマンション管理の最低基準を決めたもの。その基準に適合しているマンションであることが認定されているだけで、優良マンションということではない。

管理計画認定の手続き

  • 管理計画の認定に際しては公益財団法人マンション管理センター(通称:マン管センター)が「管理計画認定手続き支援サービス」を導入

  • 講習を受けたマンション管理士が事前確認 認定基準を満たす場合はマン管センターが「適合証」を発行する。

  • 管理組合が公表に同意した場合はマン管センターのホームページに情報を掲載

  • 民間の評価「マンション管理業協会」の制度、「日本マンション管理士会連合会」のサービスがある

  • 管理計画認定手続き支援サービス及び事前確認について

マンションストック長寿命化等モデル事業

  • 今後急増する高経年マンションについて、適切な維持管理を促進するとともに、改修や建替によるマンションの円滑な再生を図る取組を促進するため、

  • 老朽化マンションの再生検討から長寿命化に資する改修や建替え等にあたって、「政策目的に適合した取組であって、独自性・創意工夫、合理性、合意形成、工程計画、維持管理の点で総合的に優れた先導的な再生プロジェクト」を公募し、国が事業の実施に要する費用の一部を補助することにより、優良事例・ノウハウを収集し、マンションの再生に向けた全国への普及展開を図る

優良建築物等整備事業

  • 市街地の環境の整備改善、良好な市街地住宅の供給等に資するため、土地の利用の共同化、高度化等に寄与する優良建築物等の整備を国が支援することで、公共の福祉に寄与することを目的。西葛西ハイツが認定。

  • 今回の改正 「マンション建替タイプ」で 「特定要除却認定」されたマンションへの 支援。

長期優良住宅化リフォーム推進事業

良質な住宅ストックの形成や、子育てしやすい生活環境の整備等を図るため、既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームや子育て世帯向け改修に対する支援を行う。

補助対象

1)長期優良住宅化リフォーム工事に要する費用

①特定性能向上工事 ② その他性能向上工事

2)三世代同居対応改修工事に要する費用

3)子育て世帯向け改修工事に要する費用

4)防災性・レジリエンス(復元・再起力)性の向上改修工事に要する費用

5)インスペクション等に要する費用


長期優良住宅認定

  • 増改築を行う場合、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅の建築および維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請することで、基準に適合する場合には認定を受けることができる。

  • 認定を受けると下記の様なメリットが得られる

  • 「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金

  • 住宅ローンの金利引き下げ

  • 所得税、固定資産税の特例措置

  • 地震保険料の割引

集合住宅の省CO2化促進事業

  • 既存住宅における断熱リフォーム支援事業(断熱リノベ)

  • 高性能な断熱材や窓などを使って、一定の省エネ効果の向上が見込める断熱リフォームを行なった場合に、その費用の一部が助成

住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業

  • 住宅・建築物需給一体型等

  • 省エネルギー投資促進事業

  • 経済産業省 資源エネルギー庁による次世代省エネ建材の実証支援事業

  • クリーンエネルギー自動車導入促進補助金


各種ガイドライン


標準管理規約ガイドラインの改正

標準管理規約(単棟型)主な改正点

1.IT を活用した総会・理事会

2.マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高い場合等の対応

3. 置き配

4. 専有部分配管

5. 管理計画認定及び要除却認定の申請

6. その他所要の改正


標準管理規約(団地型)主な改正点

1敷地分割事業と分割請求禁止規定との関係性

  2団地修繕積立金及び各棟修繕積立金

  3招集手続


 

長計ガイドライン 主な改正点

省エネ性能/見直し/管理委託業務/専有部分の給排水管 /共用部専用使用箇所/

法定点検で指摘された箇所の保守費用/総会/旧耐震の建物/マンション管理計画の認定 /

計画期間/計画期間外で高額となる工事/工事の実施時期/管理費等経費/機械式駐車装置


省エネ性能

省エネ性能を向上させる改修工事(壁や屋上の外断熱改修工事や窓の断熱改修工事等)の実施も考慮

見直し

5年ごとに見直しについて検討を行うことを明記。但し改正作業が1-2年かかることも示唆。

管理委託業務

・基幹業務として長計や工事についての進言も業務に入れる

・その他管理業務について言及

専有部分の給排水管

・改修についての取り扱いを明記

共用部専用使用箇所

・ガラスなどの取り扱いを明記

法定点検で指摘された箇所の保守費用

・法定点検で要是正判定の保守費用は長計では対象外

・法定点検での判定基準を記載

総会

・オンライン化を考慮

旧耐震の建物

・調査や改修について進言

マンション管理計画の認定

・利用を明記

計画期間

・30年以上でかつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上

計画期間外で高額となる工事

・参考情報として当該工事の予定時期及び推定修繕工事費を明記しておく

工事の実施時期

・調査・診断の結果を踏まえた上で、修繕工事の必要性や実施時期、工事内容等を検討することが重要と明記

管理費等経費

・単価に含める→別途設定とする場合や単価に含める

・法定福利費、大規模修繕瑕疵保険も考慮する

機械式駐車装置

・除却の可能性も示唆



修繕積立金の額の目安について

ガイドラインには「積立修繕金の額の目安」が提示されています。長期修繕計画作成ガイドラインに概ね沿って作成された長期修繕計画の366の事例が収集分析されています。長期修繕計画の計画期間全体に必要な修繕工事費の総額を、当該期間で積み立てる場合の専有面積(㎡)あたりの月額単価です。



今回の改正で

・事例数が84から366に増えました。

・承認されている計画が事例収集の対象

・金額が変更、特に小規模マンションと超高層マンションは平均が120円/㎥ほどアップしています


修繕積立金の額の目安とモデルケースの比較

計画期間全体での修繕積立金の平均額(㎡当たり月単価)の算出方法

・モデルケースにおける算定方法を変更して例示しています


計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場分を除く)


機械式駐車場がある場合の加算額

・想定必要金額を改変しています


修繕積立金の額の目安との比較方法を例示

・計画期間全体での修繕積立金の平均額(㎡当たり月単価)の算出方法を例示

・ガイドラインで示す単価基準との比較方法

・専用使用料等からの繰入れに関する留意点

専用庭等の専用使用料及び駐車場等の使用料は、それらの管理に要する費用に充当

する額を差し引いた額を、修繕積立金に繰り入れます

専用使用料積立金への繰入れ方法について例示しています


修繕積立金の主な変動要因について

・建物の所在する地域や技能労働者の就労環境の変化により、修繕工事費が変わりま す。

・仕上げ材や設備の仕様によって、修繕工事費や修繕周期が異なります。

 アスベストの有無が変動要因として追記










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